一ヶ月ほど前に、義父のお葬式があったんですけどね。
弔辞はプロにお願いしたらしいんですけど、その弔辞の最中、うちの旦那がぶつぶつぶつぶつ

「あ、うちのお母さん、これは怒るわ」
とか、
「あ、これ言ったらダメなやつ!」
とか、呟いておりまして。

しまいには、弔辞の締めの部分で若干吹き出しまして。
どうも、
誠実なる夫であった○○氏は…」
という箇所がツボにはまったらしく。

弔辞のために3時間打ち合わせしたらしいけど、何をやっとったんや…。

弔辞の中で何度も「カリスマ」と讃えられていた義父ですが、掘り返したらいくらでもエピソードが出てくるおいしい人で。

初めて彼に会ったのは14年前のクリスマス、旦那と付き合い始めたばかりの頃でした。
旦那に1000ユーロの小切手をプレゼントとして渡しているのにもびっくりしましたが、
私にくださったモレスキンの手帳に

「むったー、メリクリ!」

と日本語でメッセージを貼り付けてくださっていたのに度肝を抜かれました。
ポストイットをメッセージカード代わりにする斬新さ。
日本語でメッセージをくださる思い遣り。

・・・で、なんで’メリクリ’なん? と疑念を抱かせる意外性。

(ただ者ではないな…)。
初対面から強烈な印象を残してくださった義父。

大変に女癖の悪い方で、私も義父の愛人の方とお食事をご一緒させていただいたことがありますし、
経営していた会社の社長室にベッドまで持ち込んでいたという猛者です。


私が旦那と知り合ったときにはすでに、義父さんと義母さん、別居なさってました。
ま、当然だわな…。

義父は女癖だけでなく、性格にも難があったようで、そこかしこで人を酷い目に合わせてきたらしく、
親族でありながら葬式に顔を出さない方もちらほら。

極めつけは散々つらい目に合わせたのに、最後まで親身に看病してくれた妻に対しての遺言が、
「妻にはびた一文残さん」

ここまでくると、もう、天晴です。
義父さんは義父さんらしいままで亡くなったんだなぁ、という感じ。

そんな義父ですが、私にとってはおもろいおじいちゃんでした。

お元気なころは日本にも遊びに来てくださったんですが、その後、何度か倒れて身体の自由が利かなくなってしまい。

ドイツに来てからは月に二度、義父さんとお食事にお出かけし、毎週木曜日に義父のヘルパーさんとお買い物にでかけるのがルーティーンになっていました。

口を利くのも億劫そうなこの義父さんとの話題がうまく見つからない時は、そこいらの雑誌や新聞を音読して、たびたび聞いてもらいました。

義父さん、性格は悪いらしいんですが、私のドイツ語を笑ったり、イラついた様子を見せたことは一度もなく、何度でも正しい発音を教えてくれて、ちゃんとできると親指をグッと立ててくれるんです。

私は実害を被ったことが一度もないので、この義父をシンプルに好きでしたが、スゴイのは義母。
「びた一文残さん」という遺言を知ってなお、義父の看病をやり遂げ、お葬式の一切を取り仕切った義母。

今は

義父の葬式に来なかった人を友達リストから削除する

という作業に精を出しているそうです…。



ちょっと奥さん、押してってー

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